ちくわぶろぐ

なぁゲームの話をしようじゃないか

蟻の穴から堤も崩れる 

 

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 【ブロック崩し】1976:【ATARI】【TAITO】【不明】
 

 

あなたが生まれて初めてプレイしたビデオゲームは何ですか?
私は多分テーブル筐体のブロック崩しだったと思います。

 

当時の私は髪が伸びてくると、散髪に行くと言っては親から千円を貰い

少し離れた部落地域にある怪しげな散髪屋に行っては、

恐らく無免許であろうカタコトの店長に五百円で適当に髪を切ってもらい

お釣りの五百円で駄菓子屋で豪遊するという 

まぁ今思い返すと、とても頭の悪い子供だったのですが


ある日、私が行っているはずであろう
近所の床屋の奥さんの話から、私の稚拙な嘘が親にばれてしまい
次回からは強制的に堅気の床屋に行かされる羽目になってしまう。


そういった経緯で渋々通い始めた床屋だったのですが、
以前の散髪屋にあった「おもらいくん」やら「へんちんポコイダー
といったお下劣な漫画は一切置いてなく
 「ゴルゴ13」や「750ライダー」「よりぬきサザエさん」といった
ちびっ子には少々難解なラインナップばかり


仕方がないので退屈しながら辺りをボーっと見回していると
自分が座っているガラス張りのテーブルにブラウン管の画面があり
下の方に何やら丸いダイヤルのようなものがついてあるのに気が付く。

 

触り心地が良いのでしばらくクルクル弄り回していると
店長のおっちゃんが、何やら机を開けてカチャカチャと弄りはじめ
「準備出来るまで遊んでていいよ」とクレジットを入れてくれた

するとテーブル上にあるブラウン管がブゥンと低い音を上げ起動し
画面になにやら奇妙な白黒の映像が浮かび上がる。


ダイアルを回してみると、画面下部にあるパドルがツーと右に移動する
左右にクリクリ回すと、対応するように画面上のパドルも左右に動く

なんだか楽しくなって、左右にグリグリ回して楽しんでいると
上方から四角いドットの球がスーッとゆっくり降りてくる。


反射的にパドルを回し、落下の予想地点にパドルを移動させ待っていると
球とパドルが衝突し「ピン!」と甲高い電子音とともに跳ね返り
上部にある壁の層にぶつかると「ブリュ!」と鈍い電子音を発し
ブロックの下段1マス分が崩れ、再びゆっくりと降下してくる。


「ピン」「ポン」「ブリュ」「ピン」「ポン」「ブリュリュ」
心地よい不協和音に酔いしれ、ダイヤルを右に左に夢中で回すうち
次第に反射角度が広がりはじめ、軌道が左右に大きく振りはじめ
スピードもどんどん加速していき、堪らえきれず球を落としてしまう。

 
気を取り直し慎重にパドル操作していると、偶然上段まで崩し切った穴に
球が飛び込み、そのまま最上部の壁とブロックの間を勢いよく跳ね回り
何もしなくてもプルプルプル・・・と断続的に得点が入り続けるといった
フィーバーモードに突入 

 
今までの地味な作業プレイの反動か、子供心に脳汁がドバドバ出て
操作も忘れウットリと画面を眺めてるうちに、崩れて大きくなった穴から
球が勢いよく落下


あっ!と気づいて慌ててダイヤルを戻すも
いつも間にか小さくなってしまったパドルでは、限界まで加速された球は
流石に拾いきれず、そのままゲームオーバー

 
ここで散髪の準備が整ったようで「どうぞ」と椅子に座らされ
シャキシャキと子気味よい手つきで坊ちゃん刈りにされる間じゅう
さっき遊んだのゲームのことがグルグルと頭の中を駆け巡り
またあのゲームを遊びたい、今度はこうしてやろうああしてやろうと
そんな事ばかり黙々と考えながら、耳を少し切られたのも気づかず
夢心地で帰路につく。

 


数か月後
また髪が伸びてきたので、待ってましたとばかりに散髪代をせがみ

ワクワクしながら、息を弾ませながら例のゲームのある散髪屋に急ぐ

 

 

 

 

散髪屋は潰れていた

 

 

結局それ以降、筐体のブロック崩しを遊ぶ機会はなかったのですが

この幼少期の強烈な体験は、後の私の人生に大きな影響を与え

取り付かれたようにゲームを追い求める人生を送る羽目になるのですが

それはまた別の話で

 

 

 

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